LPガスとは?プロパンガスとの違いは?性質や特徴、用途などを紹介
「LPガス」と「プロパンガス」は同じガスのことですが、なぜ呼び名が違うのでしょうか?LPガスとプロパンガスという呼び方の違いや特徴、用途や使用上の注意などを説明していきます。
LPガスとプロパンガスは何が違う?
ご家庭で使われるガスには「LPガス」「プロパンガス」「都市ガス」が主ですが、これらのガスの違いをご存知ですか?
実は「LPガス」と「プロパンガス」は同じガスのことを指しています。
液化石油ガス法ではLPガスの規格を3種類(JIS規格では7種類)定めており、そのうち家庭・業務用で使用される”い号液化石油ガス”が一般的に「LPガス」「プロパンガス」と呼ばれています。
なぜプロパンガスとも呼ばれるの?
家庭・業務用のLPガスの主成分はプロパンですので、プロパンガスと呼ばれています。
プロパン含有率は95%以上と、家庭・業務用のLPガスはそのほとんどがプロパンです。100%プロパンではありませんが、プロパンガスと呼ばれるのも納得ですね。
ただし、ガス器具の製品情報やメーカーサイト、公的機関などでは、正式名称と言えるLPガスの呼称が一般的です。
ちなみにカセットコンロに使うカセットガスのLPガスはプロパンではなくブタンで、工業用のLPガスの主成分もブタンです。LPガスはプロパンガスと呼ばれますが、その成分が100%プロパンではないことは覚えておきましょう。
LPガスの”LP”ってなに?
LPガス(LPG)とは、「Liquefied Petroleum Gas(液化石油ガス)」の頭文字をとった略称です。
LPガス(プロパンガス)と呼ばれるガスは、加圧・冷却によってカンタンに液化させることができ、そういった比較的液化しやすいガスを「Liquefied Petroleum Gas(液化石油ガス)」と呼びます。
私たちが家庭でLPガスを利用する際、ガスはボンベに詰めて運ばれてきますが、ボンベの中には液体になったガスが入っています。その液体のガスを調整器などで気化し、ガスコンロなどのガス機器で着火して利用しているのです。
都市ガスとは違うの?
LPガス(プロパンガス)と都市ガスは全く違うガスです。都市ガスの正式名称は「Liquefied Natural Gas(液化天然ガス)」で、プロパンではなくメタンを主成分としています。
供給方法や供給エリア、料金設定、業者数、輸入先、使えるガス器具まで異なります。
LPガス(プロパンガス)と都市ガスの違いは、下記の記事で詳しく説明していますので、ご参考くださいませ。
LPガス(プロパンガス)とは
LPガスの大きな特徴は、簡単に液化できることです。圧力をかけたり低温にすることで液化させることでガスの体積が約250分の1と小さくなり、効率よく運搬・供給が可能です。
その特性を生かして、ご家庭にはガスボンベに詰めて供給されています。成人男性の胸元くらいの高さのガスボンベで、4人家族が冬場に1ヶ月使用できるほどの量のLPガス(プロパンガス)が入っています。
ガスボンベに詰めることで持ち運びやすく、またボンベを置くスペースさえあれば日本全国どこでも個別供給が可能です。離島や山間部などの都市ガスが利用できない地域でも利用できる重要なエネルギー源で、全国の約半分にあたる2,400万世帯でLPガスが利用されています。
LPガスの性質
LPガスのガスとしての性質にどういったものがあるか、代表的なものをご紹介します。
実際にLPガスを利用する上で意識することは少ないですが、知っておくと緊急時などの対応の参考になるのでチェックしてみてください。
無臭・無色
本来のLPガスは無色無臭、つまり臭いはしません。しかし、それでは万が一ガスが漏れた時に気付けないので、安全対策として人工的に臭いを付加しています。
異変に気付きやすいように、鼻につく「腐った玉ねぎの臭い」が付加されていますが、安全に利用している時にはその臭いを意識することはほとんどありません。
ガスの臭いについてや臭いを感じた時の対処法などは、こちらの詳しくまとめておりますのでご確認ください。
空気より重い
気体のLPガスは空気より重く、プロパンは約1.5倍、ブタンは約2倍の重さがあります。
そのため、万が一ご家庭でLPガスが漏れた場合は、床面など低い場所にガスが溜まります。ガス漏れの疑いがある時は、窓を開けるなど換気を徹底し、ほうきで掃き出すなど低い位置に換気をして対処しましょう。
また、ガス漏れ時に避難をする時、よく防災訓練で行うように姿勢を低くして移動すると、低所に溜まったガスを吸い込む危険性があるので注意が必要です。
熱量が高い
LPガスの主成分であるプロパン・ブタンはどちらも熱量 (カロリー)が高いです。「強い火力が出せる」と言うとわかりやすいでしょうか。
都市ガスの熱量が約11,000Kcal/㎥なのに対し、プロパンは約24,000Kcal/㎥とおよそ2.2倍の熱量で、2倍強の火力が出せる計算です。ブタンはさらに熱量が高く、約31,000Kcal/㎥と3倍近い火力になります。
家庭用のガスコンロでは使用感をそろえる為、都市ガスでもLPガスでも同程度の火力に調整されていますが、業務用ガスコンロでは強い火力が使用できる為、LPガスを好んで利用する飲食店も多数あります。
環境にやさしい
LPガスは、地球温暖化の原因とされる二酸化炭素の排出量が、化石エネルギー(石油、石炭、都市ガス、LPガス)の中で最も少ないクリーンエネルギーです。
窒素・硫黄分を一定値以上含まないように厳格に管理されている為、酸性雨の原因となるSOx、NOxも発生せず、燃焼時のススや灰分も出ないなど、地球にやさしいエネルギーとして環境問題への貢献も期待されています。
LPガスの使用上の特徴
ここまではガスそのものについてでしたが、LPガスを家庭で利用するにあたっての特徴はどのようなものがあるのでしょうか。
イメージしやすいように、都市ガスとの比較も交えながらLPガスの使用上の特徴をご説明します。
LPガスの安全性
LPガスは都市ガスと同等以上、安全に利用できるエネルギーです。
経済産業省の平成24年~28年の5年間の統計を見ると、都市ガスよりも事故発生率が低くなっています。ガス漏れや地震を感知してガスを自動遮断するマイコンメーターや24時間365日の集中監視システムの普及が、LPガスの安全性は飛躍的に高まりました。
都市ガスもLPガスもガス漏れ等による事故の危険性はありますが、注意事項を守って使用すれば安全に利用できるエネルギーと言えますね。
供給方法
LPガスはガスボンベに液体のガスを充てんし、各ご家庭に個別供給されます。
ガスボンベのサイズは様々で、片手で持てる小型のものから、バルクタンクと呼ばれる巨大なものまであり、使用状況や設置場所を考慮してボンベサイズが決定されます。また、ガスボンベを一か所にまとめて設置して複数のご家庭に導管供給することもあります。
都市ガスは広域の導管供給のみですので、LPガスの個別供給は大きな特徴ですね。
災害時に強いLPガス
LPガスは個別供給なので、もし大規模地震が起きたとしても個別点検~復旧が速やかに行えます。東日本大震災が起こった際も、地震発生後約3週間で大方の復旧が完了し、都市ガス・電力よりも早くに全面復旧を果たしました。
避難場所や仮設住宅にも最低限の設備・施工で設置できるため、災害時の給湯、炊き出し、暖房、発電などのエネルギー源としてもLPガスが活躍しています。
ガス料金の設定
LPガス(プロパンガス)は料金設定の幅が非常に広く、同じ地域で同じガス会社でも料金が倍以上違うことも珍しくありません。
都市ガスの料金は認可料金制で、ガス料金を決めるためには行政の承認が必要ですので、法外なガス代を請求されることはありません。そのため都市ガスは会社ごとの料金設定の幅も小さく、どの会社と契約しても安定した料金設定で利用できます。
LPガスはその逆で、ガス料金の規制が無いため各ガス会社がガス料金を自由に決めています。消費者のために安いガス料金設定の優良会社も多いですが、必要以上に割高なガス料金を請求する会社も多く、さらには不当な値上げを繰り返すようなガス会社もあるため注意が必要です。
優良なガス会社を選ぶことでガス料金が大幅に安くなり、不当な値上げも避けられるのが、LPガスの最大の特徴です。LPガス(プロパンガス)の料金については、下記ページにて詳しく説明しておりますのでご覧ください。
ただし、プロパンガスの販売事業者数も17,170社(2020年12月末時点)と非常に多いので、プロに相談してガス会社を選ぶことをお勧めします。
ガス会社変更時のトラブル
LPガス会社を変更する際、最も問題になるのは「貸付貸与契約(無償貸与)」です。
貸付貸与契約とは、ガス設備の費用を支払わない代わりに、割高なガス料金で10年~15年間そのガス会社を利用する、といった契約です。途中解約をすると残り契約年数に応じた解約費用がかかります。
本来は貸与契約を結ぶ際にガス会社が詳しく説明する義務があるのですが、詳しく話さないままサインを求め、消費者がガス会社を変更しようとした時に高額な解約費用がかかるとを知り、変更できなくなってしまうトラブルも後を絶ちません。
また、最近は「消費者センター」「○○協会」など公的機関に似た名称の仲介業者の利用者がトラブルに巻き込まれるケースも増えているそうです。
悪質業者によるトラブルについては、神奈川県LPガス協会のホームページに詳しい記載がありますのでご参考ください。
LPガスを安全に使用するために
LPガスは正しく使用すれば安全ですが、日常的に利用するものなので、つい意識しなくなりがちです。
安全にガスを使用するための注意点をまとめましたので、ご参考ください。違和感や不安な点があれば、すぐに利用中のガス会社に連絡しましょう。
- 換気をする(一酸化炭素中毒防止)
- ガス機器、接続具は適切なものを使用する
- 使ってない元栓は閉める
- コンロの使用中は火元から離れない
- 金網ストーブなどはシーズン前に点検する
- 点火、消火は必ず目視チェック
- ガスの炎が青いことを確認
- 再点火、繰り返し点火等での引火に注意
- 煮こぼれた際などの立ち消えに注意
- 風呂釜の空焚きに注意
- 異常を感じたらすぐにガス会社に連絡
LPガス警報器でさらに安心
- 床から30センチ以内の高さ+燃焼器より水平距離 4m以内に設置する
一戸建て住宅では警報器の設置義務はありませんが、万が一のガス漏れなどに備えとして、警報器の設置が推奨されています。
LPガスはガス漏れに気付けるように臭い付けがされていますが、ガスが低い位置に溜まるためガス漏れに気付けない可能性も考慮して、警報器の設置を希望するお客様も多くいらっしゃいます。
警報器を設置する場合は、上図の基準に従って設置しましょう。LPガスは空気より重く下に溜まりやすいので、警報機も低い位置に設置する必要があります。
もし警報機が鳴ったらガス漏れの危険性があるので、すぐにガス会社の緊急連絡先に電話しましょう。
LPガス警報器が設置不要なケース
一般家庭でも、3世帯以上の集合住宅(アパート・マンション)の場合は警報機の設置義務があります。
ただしその場合でも、使用するガス器具が以下に当てはまる場合は、警報機の設置義務はありません。とはいえ、安全性を高めるためにも、当社では警報機の設置をお勧めしています。
- 屋外に設置されている風呂釜、給湯器等
- 浴室内の風呂釜、給湯器等
- 常時設置されていないもの
- ヒューズガス栓またはねじガス栓等と接続されている燃焼器具であって、かつ、立ち消え安全装置が組み込まれているもの
LPガスは何に使われている?
LPガスの用途は家庭・業務用が一番多く、全体の42.2%を占めています。次いで工業用、化学原材料用、都市ガス用、自動車用、電力用と続いていきます。
最近ではジャパンタクシーの燃料にもLPガスが使用されていますが、実はタクシーの約8割がLPガス車です。ガスボンベを搭載する必要があり、LPGスタンドも少ないので家庭用のお車には向きませんが、LPガスのエンジンは燃費が非常に良く、業務用車両での利用価値が高いと言えますね。
キャンピングカーなどアウトドアでのLPガス利用は依然多く、小型ボンベの活用シーンも増えています。LPガスを使用した虫よけもあり、非常時にはガスボンベを直接接続して発電機にも利用できるなど、LPガスの用途は多岐にわたります。
工業用として鉄鋼や食料品製造の熱源としても利用されていますが、実は都市ガスの熱量調整にもLPガスが使われています。
SDGsに向けたLPガス業界
最近トレンドとなっているSDGsについては、日本LPガス協会・日本ガス協会ともに取り組み方針を発表しており、大手ガス会社各社も独自の取り組みをスタートしています。
LPガスは個別供給が可能な分散型エネルギーですので、災害時や備蓄エネルギーとしても有用です。
灯油からLPガスへの燃料転換や給湯機器の効率化などによってCO2排出量低減にも取り組んでおり、環境・レジリエンス等への長期貢献に向けた取り組みも始まっています。
新技術・新素材の開発などによって、LPガスの需要が広がる可能性もありそうですね。
まとめ:LPガスとプロパンガスは同じガス
LPガスとプロパンガスは、同じガスを指しています。
都市ガスとLPガスは全く別のガスで、特徴も料金設定、使用できるガス器具も違うので、ご自宅のガスがどちらのガスか把握しておきましょう。
またLPガスは幅広い用途で使われ、安全で環境にやさしいクリーンなガスです。ただし、LPガスの料金は会社によって大きな差があり、不当な値上げを避けるためにも信頼できるガス会社を選ぶ必要があります。
LPガス料金・ガス会社を見直す場合は、プロに相談しながらしっかりと比較・検討しましょう。